肌を守る力を知る。バリア機能とスキンケアの基本
「乾燥しやすい」「ヒリつきやすい」「スキンケアがしみる。」そんな肌のサインを感じたとき、まず最初に「保湿の強化」を想像しますよね。もちろん、うるおいは大切ですが、もう一つ頭に浮かんで欲しいことがあります。
それは「肌のバリア機能」です。
バリア機能は、肌を外から守り、内側のうるおいを逃がさないための「土台」。この土台が整っているかどうかで、スキンケアの手応えは大きく変わってきます。
今回は、
・肌のバリア機能とは何か
・なぜ大切なのか
・バリア機能を整えるために取り入れたい成分
について、解説していきます。ぜひ、これからのお手入れの参考にしてみてくださいね。
肌のバリア機能とは?

肌のバリア機能とは、その名の通り、私たちの「肌を守るためのバリア」の仕組みです。
この機能には、大きく分けて2つの役割があります。
(1)外部刺激から守ること
乾燥、摩擦、紫外線、花粉など、日常には肌にとって刺激となる要素がたくさんあります。
バリア機能は、こうした刺激が肌の内側に入り込むのを防いでくれます。
(2)肌内部の水分やうるおいを逃がさないこと
外側の刺激から守っていても、内側からうるおいが逃げるばかりでは、肌は乾燥していきます。
水分をしっかり抱え込み、蒸発しにくい状態を保てるよう意識するのも、バリア機能を整えるためには欠かせません。
つまり、バリア機能が高い肌とは、「入れない力」と「逃がさない力」の両方を備えた肌。
うるおっているからバリアが高いのではなく、「バリアが整っているから、うるおいが保たれる。」この順番を理解しておくことが、とても大切です。
バリア機能の主役は「角質層」
私たちが日常的に意識するバリア機能の中心は、肌の一番外側にある角質層です。
角質層は、レンガのように並んだ角質細胞とそのすき間を埋める細胞間脂質によって構成されていて、この細胞間脂質がバリア機能の要ともいえる存在です。
細胞間脂質は主に、「セラミド・コレステロール・脂肪酸」という3つの成分で構成され、これらがバランスよく重なり合うことで「ラメラ構造」と呼ばれる層をつくります。
このラメラ構造は、水と油の層が交互に重なったミルフィーユのような構造で、水にも油にも偏らないため、さまざまな刺激をブロックしやすく同時に水分を逃がしにくいという特徴があります。
大切なのは「どれか一つだけでは成り立たない」という点です。3つがそろい、バランスよく存在してはじめて、バリア機能は安定します。
バリア機能を整えるために取り入れたい3つの成分

ここからはバリア機能を意識した成分を紹介します。
(1)セラミド
セラミドは、角質細胞同士のすき間を埋める「接着剤」のような役割を持つ成分で、水分をしっかり抱え込んで肌から逃がしにくくする働きがあります。
セラミドが不足すると、乾燥しやすくなり刺激を感じやすい肌状態になるため、スキンケアで外から補うという考え方はバリアケアにおいてとても理にかなっています。
(2)コレステロール
「コレステロール」というと、少しネガティブな印象を持つ方もいるかもしれませんが、肌にとっては欠かせないバリア構成成分のひとつです。
セラミドと脂肪酸をつなぎ、ラメラ構造を安定させる役割を担っており、単体で働くというより他の脂質と一緒に存在することで力を発揮する成分です。
(3)脂肪酸
脂肪酸は皮脂にも含まれる成分で、バリア構造の柔軟性を保つ役割があり、不足すると肌がゴワついたりバリアにすき間ができやすくなったりします。
肌を「やわらかく」「しなやかに」保つために、重要な存在です。
まとめ
バリア機能を整えることは、肌を甘やかすことではありません。
「外からの刺激を防ぎ、内側のうるおいを守る」それは、美しい肌を育てるための大切な土台作りの1つです。
セラミド・コレステロール・脂肪酸は、それぞれ異なる役割を持ち、バランスよくそろうことで、はじめてバリア機能として力を発揮します。
うるおいを与える前に、まずは「逃がさない肌」を整えること。その積み重ねが、スキンケアの心地よさや手応えを変えていきます。
これからのスキンケアは、何かを足す前に、まず「守れているか」を見つめる時代なのかもしれません。
肌がゆらぎやすいと感じたときこそ、「足す前に守る」。
そんな視点で、日々のお手入れを見直してみてはいかがでしょうか。
<筆者コメント>
バリア機能を保つというケアは、正直とても地味なものです。目に見える変化がすぐに出るわけでもなく、劇的な実感があるわけでもありません。
しかし、バリア機能が整っている肌は、刺激に振り回されにくく、うるおいを保つ力をきちんと発揮してくれます。
その土台があるからこそ、新しいスキンケアを試したり多くの美容を楽しんだりする余裕が生まれ、その先には心の平安にもつながります。
守るケアは、美容を我慢するためのものではありません。むしろ、安心して挑戦できる肌をつくるための準備だと筆者は感じています。
バリア機能を整えることは、今を安定させるだけでなく、これから先の美容の選択肢や可能性を広げていくこと。
肌と長く付き合っていくための、静かだけれど大切な一歩を、ぜひ一緒に始めてみませんか。
〜美しさを自由に選ぶ。そんな楽しみを〜
筆者:西川美佐子